宮崎興治の生徒に!保護者へ!塾内日誌!

BLOG『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は原作小説も映画も素晴らしいのでぜひ見た方がいいですが、ネタバレなしが絶対にいいので、少しでも見るもしくは読む意志のある人はこの記事読むより先に本物に触れたほうがいいです(阪田)

2026.04.13

先日、小5の娘と一緒に映画版『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を観てきました。娘も上映後しばらく無言で、車に乗ってから「ロッキーかわいかった……」とぽつりと言いました。

この物語はネタバレが絶対にない方がいいので、触れる意志のある方はこの記事を読まない方がいいですし、読んだ、観た人だけ読んでください。まじで。ひとことも、ひと画像もネタバレくらわない方がいいです。

 

ネタバレしますよ。

 

いくよ。

 

2026年3月20日、日米同時公開。監督は『スパイダーマン:スパイダーバース』のフィル・ロード&クリストファー・ミラー、主演はライアン・ゴズリング。ライゴズ!大好き!ライゴズ!記憶を失った状態で宇宙船の中に目覚めた中学校の科学教師グレース。彼は地球を滅亡させかねない謎の微生物「アストロファージ」を解明するため、ひとり11.9光年先の星に向かっています。そしてやがて、同じミッションを担う異星人ロッキーと出会う——。

ライアン・ゴズリングの演技もさることながら、何より印象に残るのはロッキーの存在感です。ロッキーはCGだけでなく実物のパペットで撮影されており、『スター・ウォーズ』シリーズのクリーチャー制作で知られる特殊効果アーティストが手がけ、5人の操演者によって動かされています。目も口もどこにあるかわからない岩みたいな見た目なのに、気づいたら愛おしくなっている。動くロッキーが想像の100倍かわいい。原作でもかわいかったけど、映画で実物が動くのを見ると愛らしくて仕方がない。

SF超大作、という先入観があると少し驚くかもしれませんが、本作の芯にあるのは友情の話です。言語も体の構造も感覚器官も違う二人が、少しずつ互いを理解していく過程がていねいに描かれています。グレースとロッキーが最初に「通じ合った」瞬間のシーンは、思わず息がもれるくらいの場面でした。言葉が通じない相手と、どうやって意思疎通を図るか。そこに使われるのが数学であり、音楽であり、科学の論理なのです。ストラット博士を演じるザンドラ・ヒュラー(『落下の解剖学』)の演技も、映画に締まりを与えていました。

映画を観たあと、原作小説(アンディ・ウィアー著、早川書房刊)も読んでほしいと思っています。映画と小説はどちらが優れているかではなく、それぞれ違うものを楽しむ体験です。映画では尺の都合でかなり削られている科学的な描写——比熱の計算、エネルギー収支の推算、微生物の挙動の考察——が、小説ではグレースの一人称でびっしりと書かれています。「この知識を使えばこう考えられる」「でもここに矛盾が生じる」という思考プロセスを読者も一緒にたどっていく感じが、小説ならではの読み味です。勉強していた知識が、教科書に載っている知識が、こんなにもリアルに使われるのか、「あ、進研ゼミでやったところだ!」的感動が読み進めていくほどにいや増していきます。

ロッキーについても、小説には体の構造や睡眠の仕方、発声のしくみといった細かい設定が出てきます。エリディアン(ロッキーの種族)の指の本数から、なぜ彼らが10進法ではなく6進法で数を数えるのかをグレースが推理していくくだりなど、読んでいて手が止まらなくなる場面のひとつです。そしてもう一点、原作で際立つのはグレースの変化です。「死にたくない」と片道切符を拒み続けた一介の教師が、宇宙でできた友のために命をかける決断をする。その過程が原作ではより一層じっくり描かれていて、ロッキーを救いに行く場面の重さが映画とはまた違います。

物理・化学・生物——授業で学ぶ知識が、宇宙という状況でそのまま「考えるための道具」として使われていく。仮説を立て、実験で確かめ、予測を修正する。それは理科の勉強でやっていることと全く同じです。「なぜサイエンスを勉強するのか」と思ったとき、この物語が参考になるかもしれません。

宇宙空間の映像とロッキーの存在感、そして二人の友情は、映画ならではの大きなスクリーンで観るほうが伝わるものがあります。そして観たあとに原作を読むと、同じ物語なのに受け取るものがかなり変わります。

「ロッキー、ひとりじゃないから幸せ」——この一言を映画館で聞いたとき、目頭が熱くなりました。隣の娘もこっそり目をこすっていました。

学問は、未知のものへと手を差し伸べる意志だと私は思っています。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』はまさに、知識を使って互いを理解していく、誰かを理解するために、誰かを助けるために、学びという営為がある、ということを私たちの心に届けてくれる名作だと思います。

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