物理を教えていると、電気回路を説明するたびに、少し歯がゆい思いをすることがあります。図や数式で伝えることはできても、「実際にどう動いているのか」という手触りが、自分の中でまだ薄いと感じていました。それならいっそ資格を取ってしまおう、ということで、今年は第2種電気工事士の試験に挑戦することにしました。
勉強をはじめてみると、高校物理と重なる部分はたしかにあります。電圧、電流、抵抗、交流回路――見知った概念が並んでいて、最初は「意外といけるかもしれない」という気分でした。ところが、そうでない部分のほうがずっと多い……。電線の種類と太さ、許容電流、工事の施工ルール……教科書をひらいても、興味の入り口が見当たらない項目が次々と出てきます。インプットしたそばから頭の外に出ていく感覚で、「覚えてもすぐ忘れる」という経験を何度もしました。
過去問に手をつけてみると、最初は目も当てられない点数でした。まったく歯が立たない回がいくつも続いて、正直、逃げ出したくなることもありました。実際に1週間ほど、テキストも過去問も開かない時期がありました。
それでも、しばらくして気持ちを立て直し、過去問への取り組みを続けるうちに、少しずつ変化が出てきました。同じ問われ方が繰り返し登場することに気づき、「あ、これ見たことある」という感覚が増えてくる。一問一問を正確に覚えるというより、出題のパターンが肌になじんでくる、という感じです。何セットも繰り返すうちに、ようやく安定して合格点が出るようになってきました。
これができるようになったのもこれまでの経験によるもので、これもまた勉強の意義の一つかな、と思います。いずれできるようになる、という自信のようなもの、が養われるのは勉強にも勉強以外のことにも結びつくものでしょう。
振り返ると、TOEICを受けたり、マラソンに出たり、いろいろな資格試験に挑戦したりしてきました。自分が「まったくの初学者」として何かに取り組むことには、意味があると感じています。知らないことを勉強する苦痛、興味の持てない分野を前にしたときの億劫さ、それでも続けるための工夫――そういったことを、定期的に苦手な分野、見知らぬ分野に自分をさらし、自分自身で体験し直すことで、教える立場として見失いがちな感覚を取り戻せると思っています。
生徒のみなさんも、日々そういう場所に立っていると思います。得意ではない教科、どうしても気が向かない単元。
そこで踏ん張るための方法は一人ひとり違いますが、「逃げ出したくなりながらも、続けていたらいつの間にか解けるようになっていた」という経験は、きっと誰にでも訪れます。その「いつの間にか」を信じて、ともに取り組んでいけたらと思っています。
そうして養われた「自信」はきっとみなさんの人生を支えてくれるものになるはずです。
来週は、いよいよ学科試験です。受かるかどうかはまだわからないですが、こうして公な場所に書いておくのも、自分が逃げ出さないためのコツの一つです。